ビーチボーイズの未発表アルバム、『SMiLE』の特設ページです。
■『SMiLE』とは?
『SMiLE』とは、1966年12月に発売が予定されていた、ビーチボーイズの未発表アルバムです。
おそらく「ロック界で最も有名な未発表アルバム」です。
『Pet Sounds』発表のあと、より高みに登ろうとしたブライアンは、作詞家/共作者として奇才バン・ダイク・パークスを迎えました。
アルバムのコンセプトは「神に捧げるティーンエイジ・シンフォニー」だったそうです。
もともと期待が高かったアルバムですが、「最も有名な未発表アルバム」といわれている理由は、
- 同年5月の傑作アルバム、『Pet Sounds』の次に来る予定であったアルバムであること
- 同年10月のシングル、「Good Vibration」が全米1位となる秀逸な出来だったこと
- レコーディングの断片が他のアルバムで収録され、その作品が優秀であること
- さらにはBootlegでも断片が発掘され、その作品が優秀であること
以上のような理由により、実現したら『Pet Sounds』に劣らぬ素晴らしい作品だっただろう、ということで今でも世界中に『SMiLE』コレクターがいます。
■Album Jacket
このアルバムにはキャピトルが勇み足で作成したジャケットがあり、ブライアン・ウィルソンを煽るためだったともいわれています。
興味深いのは、アルバム・ジャケットの裏面に曲目リストが記載されている点です。
但し、この曲目リストは曲順までは指定しておらず、「See record label for correct playing order」と書かれてあるそうです。
つまり、「曲順はレーベル面を見よ」ということみたいです。
この手の手法は他のレコードでも散見されますので特段珍しいことではありませんが、少なくとも曲の候補としてはある程度信頼出来ると思います。
このリストには後日発表された曲もありますが、果たして本当に意図したバージョンなのかは分かりません。
複数の曲で色々なバージョンが存在しており、また、ブライアンの調子が悪くなってプロデュース出来なくなり、強引にまとめられた曲も存在します。
特にアルバム『Smiley Smile』に収められた曲は、30周年記念BOX『Good Vibrations Box』(以下、『GVB』)に収められたバージョンより遥かに劣ると思います。
■ジャケット裏面の曲目(記載順のまま)
Side A (?)
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Side B (?)
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Do You Like Worms
『GVB』
Wind Chimes
『Smiley Smile』
『GVB』
Heroes And Villians
『Smiley Smile』
『GVB』
Surf's Up
『Surf's Up』
『GVB』
Good Vibrations
『Smiley Smile』
Cabin Essence
『20/20』
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Wonderful
『Smiley Smile』
『GVB』
I'm In Great Shape
Child Is Father Of The Man
The Elements
Vega-Tables
『Smiley Smile』
『GVB』
The Old Master Painter
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青字はオリジナル・アルバム収録曲、赤字は『GVB』収録曲です。
また、アルバムのコンセプトとして、A面を「アメリカの歴史=Americana」、
B面を「世界を構成するといわれる四つの基本元素=Elemental」とした説が根強くあります。
これを元に『SMiLE』の曲目・曲順を推測したいと思います。
■推測『SMiLE』
Side A [ Americana ]
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Side B [ Elemental ]
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- Heroes And Villians
『GVB』
- Do You Like Worms
『GVB』
- Old Master Painter - You Are My Sunshine
(Bootleg)
- Wonderful
『GVB』
- Child Is Father Of The Man
(Bootleg)
- Cabin Essence
『20/20』
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- Good Vibrations
『Smiley Smile』
- The Elements [EARTH] Vegetables
『GVB』
- The Elements [AIR] Wind Chimes
『GVB』
- The Elements [FIRE] Mrs. O'Leary's Cow
(Bootleg)
- The Elements [WATER] I Love To Say Da Da
『GVB』
- Surf's Up
『GVB』
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もしくは
Side A [ Americana ]
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Side B [ Elemental ]
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- Heroes And Villians
『GVB』
- Do You Like Worms
『GVB』
- Old Master Painter - You Are My Sunshine
(Bootleg)
- Wonderful
『GVB』
- Child Is Father Of The Man
(Bootleg)
- Cabin Essence
『20/20』
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- Good Vibrations
『Smiley Smile』
- Vegetables
『GVB』
- Wind Chimes
『GVB』
- I'm In Great Shape
(Bootleg)
- The Elements
(Bootleg)
- Surf's Up
(Bootleg)
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この予想はあくまで私の個人的な推測であり、あまり明確な根拠はありません。
発売されたとしたらこんなのだったんじゃないかな、という程度の予想です。
「Vegetables」と「Wind Chimes」は、クレジット上、「The Elements」とは別になっていますので、どちらかというと後者の方がより近いのかな?とも思っています。
「The Elements」と「Surf's UP」は未完であり、前者は全パートが揃っていなかった、後者はブライアン・ボーカル+最終アレンジのバージョンがあったのでは?と思っています。
また、私個人が現在聴いているMy『SMiLE』は下記のようにまったくの別物で、多くの願望が入っています。
編集(トリミング/つなぎ合わせ/曲間調整/フェード・アウト)が入っている上、より長く聴きたいため細かい断片も採用しており、1時間近くあります。
■My『SMiLE』
Side A [ Americana ] (28:06)
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Side B [ Elemental ] (24:14)
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- Our Prayer (1:06)
- Heroes And Villains (8:05)
- Barnyard (1:08)
- Do You Like Worms (4:17)
- Old Master Painter - You Are My Sunshine (1:12)
- He Gives Speeches (1:41)
- Wonderful (2:03)
- Child Is Father Of The Man (3:03)
- Cabin Essence (5:31)
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- Vegetables (3:47)
- I'm In Great Shape (0:40)
- Wind Chimes (2:25)
- I Wanna Be Around - Friday Night (1:33)
- Look (2:41)
- Holidays (2:21)
- Mrs O'Leary's Cow (2:36)
- I Love To Say Da Da (1:34)
- George Fell (0:28)
- Reprise (1:23)
- Surf's Up (3:38)
- You're Welcome (1:08)
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AB面は曲数・長さともバランス悪いし、21曲もあるし、「Good Vibrations」入ってないし、ありえない構成ですが、お気に入りです。
■My『SMiLE』解説
コンセプト
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まず、全体コンセプトを考え、アウト・ラインを決めました。
- [ Americana ]、[ Elemental ]に基づいて曲を分類・選別
- 大物曲をAB面のトップ、ラストに配置
- A面トップ、B面ラストには、コーラス的な小品を配置し、「神に捧げるティーンエイジ・シンフォニー」っぽく演出
- なるべく多くの曲、長い演奏を目標
次に主要曲の選定・曲の配置を行いました。
- 「Good Vibrations」は、「Americana」、「Elemental」のどちらにも該当しない感じがするので、除外
- 「The Elements」は4曲で構成し、原則、インストルメンタル・ナンバーで構成
最後に小品の選定・曲の配置を行いました。
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Side A 「Americana」
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「Heroes And Villains」と「Cabin Essence」を核として、構成しました。
この選曲・曲順は、結果的にBootleg「SOT Vol.16」と同じですが、曲自体のバージョンは違います。
特に、「Heroes And Villains」、「Barnyard」、「Child Is Father Of The Man」は複数をバージョンをつなぎ合わせています。
[ Americana ]サイドの曲順は早くから決定しており、曲の編集に多くの時間を費やしました。
- Our Prayer (1:06)
オープニングを飾るのは、小品コーラス。
『GVB』のバージョンを使用しました。
- Heroes And Villains (8:05)
ロング・バージョン。
「Gee」含め、色々な小品が繋がったバージョンをさらに編集し、
エンディングに『Brian Wilson Presents SMiLE』と同じくストリングス・パートを配置しました。
『GVB』の「Sessions」から引用し、ホルンで終わる構成となっています。
採用したバージョンの中間部にストリングス・パートがあったため、結果的にリプライズになっています。
- Barnyard (1:08)
最も編集した曲。
Bootlegは前奏の音が極端に悪かったので、前奏パートに『Brian Wilson Presents SMiLE』を使用しました。(反則?)
メインのボーカル・パートはBootlegを使用しました。
コーラス・パートは4コーラスでカット、そこから唐突にピアノ・デモ・バージョンが始まる構成としました。
- Do You Like Worms (4:17)
Bootlegをほぼそのまま使用しました。
- Old Master Painter - You Are My Sunshine (1:12)
Bootlegをほぼそのまま使用しました。
- He Gives Speeches (1:41)
Bootlegをほぼそのまま使用しました。
- Wonderful (2:03)
『GVB』のバージョンを使用しました。
- Child Is Father Of The Man (3:03)
2つのBootlegを繋げました。
前半にピアノのインスト・パート、中盤にアコースティックなインスト・パート、後半にボーカル・パートと構成しました。
- Cabin Essence (5:31)
Bootlegの長めのバージョンをほぼそのまま使用しました。
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Side B 「Elemental」
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「Vegetables」、「The Elements」、「Surf's Up」を核として構成しました。
悩んだ末の「The Elements」は、
- 第一に、「The Elements」とは、小品の組曲だったと判断(個人的願望を含む)
- 第二に、「Vegetables」、「Wind Chimes」は一曲として完成しており、クレジットもあるため相応しくないと判断
- 第三に、「Cool,Cool Water」は、録音時期が違うことに加え、他の曲と比べて音がクリア過ぎるので相応しくないと判断
以上のような理由から、「Look」、「Holidays」、「Mrs O'Leary's Cow」、「I Love To Say Da Da」となりました。
また、「Vegetables」がB面のトップというのは、結構いいと思います。
[ Elemental ]サイドは、曲の繋がりを含めた選曲・曲順を試行錯誤しました。
- Vegetables (3:47)
Bootlegをほぼそのまま使用しました。
「Good Vibrations」に代わりB面トップに持ってきましたが、最近ではこの曲が掛かると「B面だ」と思うようになりました。
- I'm In Great Shape (0:40)
2つのBootlegを繋げました。
前半にブラスのインスト・パート、後半にピアノ・オンリーのボーカル・パートと構成しました。
- Wind Chimes (2:25)
『GVB』のバージョンを使用しました。
この曲から「The Elements」までの流れは、最も好きな部分です。
- I Wanna Be Around - Friday Night (1:33)
Bootlegをほぼそのまま使用しました。
「Friday Night」は「Fire」の再建、というのが一般的な解釈みたいですが、個人的にはEarthに繋がる前触れの方がマッチすると思い、
敢えて「The Elements」の前に配置しました。
- Look (2:41)
Bootlegをほぼそのまま使用しました。
この曲が「The Elements」の始まりで、ピアノの音が神々しいです。
- Holidays (2:21)
Bootlegをほぼそのまま使用しました。
軽快なマリンバのサウンドが風を連想させます。
- Mrs O'Leary's Cow (2:36)
Bootlegのコーラスのないインストルメンタル・バージョンをほぼそのまま使用しました。
確かに怖いほど雰囲気が出ており、ブライアンが封印しようとしたのがうなずけます。
- I Love To Say Da Da (1:34)
『GVB』のバージョンを使用しました。
最後まで『Sunflower』のアウト・テイク・バージョンといわれている、「Cool,Cool Water」ショート・バージョンと悩みました。
しかし、他の曲と比べて音がクリア過ぎるので、「I Love To Say Da Da」にしました。
どちらにしても、跳ねるようなサウンドが水を連想させます。
- George Fell (0:28)
Bootlegのブラス・パートのみを抜き取り、フェード・アウトさせました。
- Reprise (1:23)
Bootlegをほぼそのまま使用しました。
- Surf's Up (3:38)
『GVB』のピアノ・デモ・バージョンを使用しました。
これほど美しい曲があるでしょうか?
全ビーチボーイズの中でもベスト・トラックです。
- You're Welcome (1:08)
唯一、公式発表バージョンを使用しました。
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以上が、私のMy『SMiLE』です。(今も時々進化していますが)