2011/11/1、伝説の未発表アルバムの音源として『SMiLE Sessions』が発表されました。
発売された形態としては、以下のバリエーションがあります。
- 1CD版:本編19曲+ボーナス・トラック8曲。
- 2CD版:本編19曲+ボーナス・トラック8曲、Sessionダイジェスト1枚。
- BOX版:本編19曲+ボーナス・トラック8曲、Session詳細4枚、LP、EP。
もちろん、熱烈なファンにはSession詳細を含むBOX版の発売は涙が出るくらい嬉しいことでしょう。
しかし、今まで『SMiLE』に触れたことのない方にも1枚のCDとして楽しめる構成になっています。
本編19曲は2004年に発売されたブライアン・ウィルソンのソロ・アルバム、
『Brian Wilson Presents SMiLE(以下、BWPS)』に添った形でエディットされています。
アルバムとして完結してるように見えますが
「当時のアルバムを再現したわけではない」
ということだけは頭の隅に入れておいて欲しいと思います。
その意味では、『SMiLE Sessions』というタイトルは的を得ており、日本版が「SMiLE」と呼んでしまっているのは語弊があります。
本編19曲は、「Edit SMiLE」、「Re-Build SMiLE」、「Imagination SMiLE」、などと呼ぶのが良いのではないでしょうか?
今回、私はどれを買うか、散々悩みました。
一応、公式として出たんだから、本編のみでいいか?Sessionダイジェストくらいは聴いておきたい、全部聴きたくなるからBOXを買っておけ(心の中の声)。
結局、最近は音楽を聴くのは車の中か電車の中な上、日本版の2CD+アルファくらいの値段で買えるので、BOX版をデジタル・ダウンロードで買いました。
(まあ、どのCDを買うとしても日本版はありえませんでしたが)
本サイトでは、本編19曲について、個人的な解釈を書いてみたいと思います。
Album Jacket,Title and Songs
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Detail
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SMiLE Sessions [US:2011/11/01]
- Our Prayer
- Gee
- Heroes and Villains
- Do You Like Worms (Roll Plymouth Rock)
- I'm In Great Shape
- Barnyard
- My Only Sunshine (The Old Master Painter_You Are My Sunshine)
- Cabin Essence
- Wonderful
- Look (Song for Children)
- Child is Father of the Man
- Surf's Up
- I Wanna Be Around _ Workshop
- Vega-Tables
- Holidays
- Wind Chimes
- The Elements_ Fire (Mrs. O'Leary's Cow)
- Love to Say Dada
- Good Vibrations
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伝説の未発表アルバム、『SMiLE』の音源を現代版エディット。
- Our Prayer
美しく印象的なアカペラ・ナンバー。
「神に捧げるティーンエイジ・シンフォニー」の始まりです。
やはり、『SMiLE』のオープニングはこれでなくてはいけません、という感じです。
- おそらく、ミックス以外は『Good Vibrations Box(以下、GVB)』版と同じですね。
- Gee
次は最初の大作ナンバーへのブリッジ的なリズム感のあるアカペラ・ナンバー。
明るめの曲で、ピアノが途中から入り、最後はホルンで次曲へなだれ込みます。
- 歌詞からも分かるように、「Heroes and Villains」セッションの一部でした。
- Heroes and Villains
一般的には24枚目のシングルとしてヒットしたナンバー。
ジェット・コースターのようなめまぐるしい展開はシングル以上に健在で、
上下する美しいメロディ・ラインと共に気を抜けません。
- オリジナルと思いきや、2:10あたりから「Cantina」と呼ばれるパートで分岐します。
聴きなれたパートに戻ったあと、
最後には「Prelude to Fade」と名付けられている大好きなストリングス・パートで締めくくります。
- Do You Like Worms (Roll Plymouth Rock)
前曲の延長線上にあるピアノが軽快で美しいナンバー。
それもそのはず、「Heroes and Villains〜」のコーラスが同一メロディで軽快なピアノになったり、
「Bicycle Rider〜」になってますから。
- 既に『GVB』で発表されていたバージョンとほぼ同じなのでインパクトは少ないですね。
最後に『GVB』版にはなかった「Heroes and Villains」のコーラスの一部がくっ付いています。
- I'm In Great Shape
ブライアンがピアノで歌い上げる跳ねるようなナンバー。
ここから4曲、小品のメドレーとなります。
ちょっとエコーとか演出が過剰気味な感じに思えます。
- おそらく、『Endless Harmony Sound Track』のデモ・バージョンに
ホーン・セクションを被せたと思われます。
- Barnyard
次の小品は動物の鳴き声が入る楽しげなナンバー。
小品ナンバーの中では一番好きな曲で、短いながら強い印象を残すメロディです。
- ここまで音の良い「Barnyard」を聴いたことがなかったので、音の良さに感動です。
構成は『BWPS』同様、ボーカル⇒コーラス⇒ボーカル⇒コーラスとなる編集です。
しかし、次の曲とメドレーになっているためブツ切れなのはイマイチです。
この曲はフェード・アウトして欲しかったですね
- My Only Sunshine (The Old Master Painter_You Are My Sunshine)
最後の小品は、クレジット上もメドレー扱いのナンバー。
弦楽器がフィーチャーされてますが、前半部はリズミカルな感じのインストルメンタル・ナンバーで、
後半部はスローな感じから管楽器が入ります。
最後にマンドリンの「Fade」と呼ばれる部分が入ります。
- パーカッションの音が後半部やたら目立ちます。
最後の「Fade」パートは、今まで「Cantina」のあとにくっ付いてましたから、びっくりしました。
- Cabin Essence
オリジナル・アルバム『20/20』のエンディングを飾ったマンドリンが印象的なナンバー。
何処か懐かしくなるメロディを持つ静の部分とめまぐるしく音程が上下する動の部分が素晴らしいです。
三部構成の第一部エンディングであり、気持ちが高潮しますね。
- 『20/20』ではミックス違い+ステレオ化で当時の録音がそのまま採用されたようなので、
この曲は完成されていたのでしょう。
- Wonderful
メロディ、コーラス、ハープシコードが美しいバラード・ナンバー。
この曲は本当に綺麗な曲です。
『Smiley Smile』バージョンしか聴いたことのない人は、心の琴線に触れることでしょう。
- 既に『GVB』で発表されていたバージョンよりさらに音が良くなっている気がします。
ミックスが違うのか、若干コーラスが違う風に聴こえます。
- Look (Song for Children)
ピアノの音が神々しいインストルメンタル・ナンバー。
サックス、縦笛、トライアングル(?)の音も非常に綺麗で上品な感じの曲です。
- 上品な曲、と書きましたが、「Child Child Child」のコーラスはない方が良かったです。
Bootleg≒初期録音にはなかったのに、何で入れたのかな?
- Child is Father of the Man
ピアノが前曲と同じようなリズムを刻むナンバー。
しかし、マイナー調で神々しいというよりは切羽詰った感じがします。
- 「Barnyard」と並んで音が良いことに感動してしまいました。
曲の展開自体はBootlegで聴いていたバージョンとほぼ同じでしたが、
冒頭の静かな部分は聴いたことがありませんでした。
- Surf's Up
オリジナル・アルバム『Surf's Up』のタイトル・チューンで全てが美しいバラード・ナンバー。
この曲については「解説の必要なし、聴きなさい」としかいいようがありません。
ここで第二部の終了です。
- 既発表としては、フル演奏+カール・ボーカルの『Surf's Up』版、
ピアノ・ソロ+ブライアン・ボーカルの『GVB』版が公式で出ていますが、
フル演奏+ブライアン・ボーカルは初出で、やはり素晴らしいです。
ちょっとエコーが効きすぎのような気がしますが。
さらに、ボーナス・トラックにはこれらのバージョンを凌ぐ「Surf's Up 1967」という、
これまた美しいデモ・バージョンがあります。
- I Wanna Be Around _ Workshop
JAZZのカバー曲と大工さんの仕事中を表現したサウンドのメドレー・ナンバー。
癒される感じの前半部からノコギリやトンカチの音がマリンバのリズムをバックに流れます。
- 「Workshop」の一部は「Do It Again」というシングルのエンディングに使われています。
- Vega-Tables
一般的に「地」を表現したと言われている野菜をかじる音や水の音など明るく楽しげなナンバー。
コーラスも凄く複雑で聴いていて楽しいです。
パーカッションや効果音が多く、音数がほかの曲に比べて多い気がします。
- どのパート、どのバージョンが組み合わさっているのか良く分かりません。
最初のサビの部分のマリンバは要らなかったか、二回目に入った方が良かったと思います。
最後のコーラス・パートって「Vega-Tables」じゃなかったような気もしますが。
- Holidays
場所的には「地」ですが風を連想させるマリンバが軽快なインストルメンタル・ナンバー。
前曲が「地」で本曲と次曲が「風」なのか、本曲が「地」で次曲が「風」なのか、解釈に迷います。
音が激しく上下するのはテルミンなのかな?
ちょっとパーカッション、特にスネアが目立ちすぎな感じがします。
- 曲の流れ自体はBootlegで聴いていたバージョンとほぼ同じでしたが、明らかにミックスが違います。
というかBootlegを神様にしちゃいけませんね。
- Wind Chimes
「風」を表現した前曲とのメドレーっぽくなっているマリンバとコーラスが美しいナンバー。
「Wonderful」、「Vega-Tables」と並んで、『Smily Smile』版と比較するとケタ違いに優秀な出来です。
- 『GVB』版より、静かなパートでやたらパーカッションが前に出ています。
構成はコーラスがぶり返すところあたり『BWPS』版に近い流れですね。
- The Elements_ Fire (Mrs. O'Leary's Cow)
「火」を表現した恐ろしく不気味なインストルメンタル・ナンバー。
さすが天才ブライアン、音だけで良くこんなもの作れますね、って感じです。
被さるコーラスもさらに不気味さを演出して、「Fire」というタイトルに相応しい出来です。
- Bootlegで出回っているインストルメンタルに
『Smiley Smile』の「Fall Breaks And Back To Winter」コーラスがエディットされています。
結果としてBootlegの「Purple Chick」とほぼ同じですね。
- Love to Say Dada
「火」のあとは「水」を表現したナンバー。
こちらはコーラスだけで水を連想させる前半部と、水を得た魚のように跳ねるような曲調です。
共に素晴らしいですが、前半部のコーラスは圧巻です。
- 「Water Chant」と呼ばれるコーラスから始まる編集です。
このコーラスのあとは、どうしても『Sunflower』の「Cool Cool Water」が始まる気がしてなりません。
最後に「Our Prayer」の一部がくっ付いています。
- Good Vibrations
最後はいわずと知れた全米No.1のヒット・ナンバー。
色々なパートを組み合わせて作られた構成はポケット・シンフォニーと呼ばれ、素晴らしい曲です。
- オリジナル版とちょっと違い、ブリッジの後半でコーラスが多く入ります。
何処をブリッジと呼ぶのか定かではありませんが。
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文中にも書きましたが、本編全体を通してパーカッションがやたら強めに聴こえます。
BBの美しいコーラスを前面に出した方が良いかなと思いました。
また、BOX全編を通して、
- 「Surf's Up 1967 (Solo Version)」があまりにも美しかったこと
- 「Sessions」の内容にインストルメンタル・トラックが多く、ボーカル付きのトラックが少ないのが残念だったこと
- (特に「Barnyard」についてはボーカル付きのマスター・バージョンが聴きたかった)
- 「Wonderful」、「Fire」など異様なセッション風景が楽しめたこと
などが印象に残りました。
ちなみに、1CD版のボーナス・トラックはなかった方が良かったと思います。